学資保険とNISA、教育費はどっちで準備すべきか?売る側にいた元銀行員FPが本音で解説
2026/07/12
公開:2026年7月11日(記事内の情報は2026年7月時点)
「学資保険で、大学費用まかなえますよ」
銀行員時代、私が窓口で使っていた言葉です。
嘘ではありませんでした。満期金は、たしかに大学の入学金や授業料に充てられます。
でも、今なら分かります。あのお金の正体は、保険が増やしたお金ではなく、親が18年かけて積み立てた元本そのものでした。まかなっていたのは保険ではなく、あなた自身です。
この記事は、あの頃の私のトークを、売る側の内側から解体するために書いています。
この記事は、0〜6歳のお子さんがいて、「学資保険を勧められたけど、SNSではNISA一択と言われて板挟み」という方向けです。
結論:学資保険とNISAは競合商品ではなく、役割が違う道具です。
- 学資保険は「増やす道具」ではなく「必ず貯め切るための道具」。増える力はほぼありませんが、使う時期に元本が確実にあります。
- NISA(投資信託)は「増える可能性がある代わりに、使いたい年に減っている可能性もある道具」です。
- 選ぶ基準は商品の優劣ではなく、「そのお金を使う時期が決まっているかどうか」と「暴落が来ても続けられる家計かどうか」です。
学資保険とNISAは何が違うのか?
両者の違いを「どっちが得か」で語ると、必ず迷子になります。道具として何が違うかだけ、先に押さえてください。
| 学資保険 | NISA(投資信託) | |
|---|---|---|
| お金の性質 | 満期時の受取額がほぼ確定 | 使う時点の相場で増減 |
| 増える力 | 返戻率はおおむね100〜110%程度が目安(18年で数%) | 長期の株式投資では年平均数%のリターンが期待されてきた(保証はない) |
| 途中でやめると | 解約返戻金が払込額を下回ることが多い | いつでも時価で売却可能(減っていることもある) |
| 親に万一のとき | 以後の保険料が免除され満期金は受け取れる | そうした保障はない |
※返戻率・制度は2026年7月時点の一般的な水準です。個別商品の最新条件は必ず設計書でご確認ください。
銀行員として本音を言えば、学資保険は「貯蓄商品」というより「強制力と保障が付いた貯金箱」です。18年で数%しか増えないものを「増やす手段」として売っていたことが、冒頭のトークの正体でした。一方で、途中でやめると損をする仕組みが「絶対に取り崩せない」という強制力になる——これは弱点であると同時に、この商品の唯一にして本物の機能です。
学資保険が向いているのはどんな家庭?
- 貯金が「あればあるだけ使ってしまう」自覚がある家庭。取り崩せない仕組みそのものに価値があります。
- 1円も減らせない事情がある家庭。進学時期に必要額の最低ラインを確定させたい場合、元本確保は理屈抜きの安心です。
- 親に万一があったときの保障を教育資金とセットで持ちたい家庭。保険料払込免除は預金にもNISAにもない機能です。
逆に、「増やしたいから学資保険」は目的と道具がズレています。増える力は、ほぼありません。
NISAでの教育費準備が向いているのはどんな家庭?
- 使う時期まで15年以上ある家庭(子どもが0〜3歳)。期間の長さは価格変動リスクを均す最大の味方です。
- 教育費と別に、生活防衛資金(生活費の半年〜1年分)が既にある家庭。暴落時に「売らずに待てる」体力の裏付けです。
- 相場が下がった時に積立をやめない、と家族で合意できる家庭。NISAの失敗の多くは商品ではなく、途中でやめる行動から生まれます。
大学入学の直前に暴落が来たらどうなる?
「NISA一択」を勧める情報の多くが、この問いに答えていません。ここに答えを持たずに全額をNISAに置くのは、準備ではなく賭けです。
過去の大きな下落局面では、世界の株式市場が1〜2年で3〜5割下がったことがあります(例:2008年前後)。積み立てた600万円が、入学金の振込月に400万円になっている——起こる確率は低くても、起きたときに「待つ」が使えないのが教育費です。大学は相場の回復を待ってくれません。
だから実務では、出口に向けた作戦をあらかじめ決めておきます。考え方は主に2つです。
作戦1:出口の3年前から段階的に現金化する
使う時期の3年ほど前から、毎年3分の1ずつ売却して現金や個人向け国債などに移す。最後の瞬間の相場に全額を委ねない、時間分散の出口版です。
作戦2:最低ラインは元本確保、上乗せ分だけNISA
「国公立なら払える額」までを学資保険や預金で確定させ、私立や自宅外進学への上乗せ分だけをNISAで育てる。下限が確定していれば、暴落が来ても人生の選択肢は残ります。併用が正解になる家庭は、実際には少なくありません。
学資保険かNISAかは、商品の優劣では決まりません。そのお金に「締め切り」があるかどうかで決まります。
試しに、いま分けてみてください。あなたが教育費として貯めたい金額のうち、「この年のこの月に必ず払う」と締め切りが言える部分はいくらですか?——その部分が元本確保の担当、残りが成長の担当。この仕分けが終わった人に、もう「どっち?」の迷いはありません。
よくある質問
- Q. 学資保険を途中で解約するとどうなりますか?
- A. 多くの場合、解約返戻金は払込済み保険料を下回ります。特に契約から数年以内の解約は目減りが大きくなりがちです。だからこそ、契約前に「18年間この保険料を払い続けられる家計か」の確認が、商品選び以上に重要です。
- Q. 児童手当をそのまま教育費の積立に回すのはアリですか?
- A. 合理的な方法の一つです。家計の外から入ってくるお金なので、生活費に混ざる前に積立へ直行させる仕組みを作りやすいのが利点です。行き先を学資保険にするかNISAにするかは、本文の判断軸で仕分けてください。
- Q. 祖父母が学資保険を契約したがっています。断るべきですか?
- A. 断る必要はありませんが、契約者・受取人の設計次第で税金の扱いが変わるため、契約前に全体像を整理することをお勧めします。気持ちはありがたく受け取りつつ、設計だけは親世帯の教育費計画と合わせて決めるのが安全です。
- Q. 子どもがもう10歳です。今からNISAで教育費は間に合いますか?
- A. 大学入学まで8年だと、価格変動を時間で均す力は弱くなります。この場合、教育費の本体は元本確保型で作り、NISAは「大学後半の費用」や「老後資金」など締め切りが遠いお金の担当にする、という役割分担が現実的です。
最後に。あの頃の私のトークに、一言だけ返事をするなら、こうです。
「まかなうのは保険じゃない。計画を立てた親だ」
——あなたの教育費、締め切りのある部分はいくらですか?
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