借りられる額と借りていい額は違う|金利上昇で先に確かめること
2026/09/02
最終更新:2026年9月2日(記事内の金利等の情報は2026年9月時点)
「金利が上がる前に、借りたほうがいいでしょうか」
この9月、ニュースを見てそう思われた方は多いと思います。
フラット35の金利は3.4%台まで上がり、変動金利も引き上げが始まりました。9月17日・18日の日本銀行の会合で、さらに利上げがあるという見方も出ています。
ただ、この質問に答える前に、確かめておきたいことがひとつあります。
——その「借りたほうがいい」は、いくら借りる話ですか。
この記事は、住宅の購入を考えている、あるいはすでに住宅ローンを返している30〜40代の会社員・共働き世帯の方向けです。
結論:金利のニュースで動くのは「借りられる額」です。「借りていい額」は、金利では決まりません。
- 金融機関が出してくる上限は、あなたが返せる額ではなく、その会社が貸せる額です。主語が違います。
- 金利が上がると審査で通る額は下がりますが、それは貸す側のリスクの見方が動いただけで、あなたの生活が変わったわけではありません。
- 急ぐと、借りていい額を超えます。急がせているのは金利ではなく、締め切りです。
なぜ今、金利の話が出ているのか
背景にあるのは、日本銀行の政策金利の引き上げです。2024年7月に0.25%へ引き上げられて以降、段階的に利上げが続き、2026年に入って1.0%程度まで来ています。
これを受けて、住宅ローンの金利も動いています。長期の固定金利は先に反応するため、フラット35は9月に3.4%台となり、3.5%が視野に入ってきました。変動金利も、引き上げを発表する金融機関が出始めています。
※金利は金融機関ごと・月ごとに変わります。実際の適用金利は必ずご自身で最新のものをご確認ください。
金利が上がると、何が変わるのか
変わるのは、主に2つです。
1. 毎月の返済額が増える
同じ金額を借りても、金利が高ければ返済額は増えます。金利差は小さく見えても、35年という時間をかけると差は大きくなります。
たとえば3,000万円を35年で借りた場合、金利が0.3%違うだけで、総返済額は約170万円変わります。0.3%は、窓口では「誤差みたいなものですよ」と言われることもある幅です。
2. 「借りられる額」が下がる
金融機関は、返済負担率などをもとに融資の上限を出します。金利が上がれば同じ年収でも返済額が増えるため、通る金額は下がります。
ここで多くの方が、こう考えます。「借りられる額が下がる前に、借りてしまおう」と。
気持ちはよく分かります。ただ、この判断には主語がありません。下がっているのは「その会社が貸せる額」であって、あなたが返せる額ではないからです。
金利のニュースを見たときに、先に確かめること
- いまの家賃、または返済額はいくらか
- それは手取りの何割か
- 金利が1%上がったら、返済額はいくら増えるか
- その増えた分を、10年後も20年後も払い続けられるか
この4つは、金融機関の審査には出てきません。審査は年収と借入状況を見ますが、あなたの生活の中身までは見ていないからです。
銀行にいたころ、お客さまのお金の行き先を決めていたのは、お客さまではなく、私でした。決めているつもりはありませんでした。それでも、こちらが出した数字が、そのまま相手の基準になっていました。
住宅ローンの上限も同じです。出てきた数字を見ると、人はそれを自分の予算だと思います。
でもあの数字は、年収と借入状況から機械的に出たものです。生活の中身は入っていません。決めているのは、相手です。
「借りていい額」は、どうやって決めるのか
難しい計算は要りません。順番だけです。
先に「毎月いくらなら払えるか」を決める
借入額から入ると、返済額は結果として出てきます。順番を逆にして、毎月払える額から入ると、借入額のほうが結果になります。
目安として使いやすいのは、いまの家賃です。すでに毎月払えている実績のある金額だからです。ただし持ち家には固定資産税や修繕費、管理費がかかるので、家賃と同額なら安全、とは限りません。
上がったときの数字で決める
変動金利を選ぶ場合、いまの金利で払える額ではなく、金利が上がったときの額で払えるかを先に見ます。上がってから考えるのでは、選択肢が減った状態で考えることになります。
「貸せる額」との差は、余白として残す
上限まで借りない、という選択ができます。上限と実際に借りる額の差は、損ではありません。それが、あとで何かが起きたときの余白になります。
すでに借りている人は、どうすればいいですか
まず、ご自身の契約を確認するところからです。相談の場で「固定ですか、変動ですか」とお聞きすると、すぐに答えられない方は珍しくありません。恥ずかしいことではなく、契約したあとに見る機会がないからです。
確認するのは3つだけです。固定か変動か。金利は何%か。残りの返済期間は何年か。
この3つが分かると、「金利が上がったら自分はいくら増えるのか」が計算できます。逆に、この3つを知らないままニュースを見ても、不安になるだけで判断はできません。
よくある質問
- Q. 金利が上がる前に、急いで借りたほうがいいですか?
- A. 「いつ借りるか」より「いくら借りていいか」が先です。金利が上がる前に借りても、借りていい額を超えていれば、返すのは同じあなたです。急いで決めた条件は、契約した日に固定されます。金利は動きますが、あとから借入額は動かせません。
- Q. 変動と固定、どちらがいいですか?
- A. どちらが得かではなく、どちらのリスクを自分が持つかで考えます。変動は、金利が上がったときの負担を自分が引き受ける代わりに、いまの金利が低い。固定は、その負担を金融機関が引き受ける代わりに、上乗せ分を払っている。固定の金利が高いのは、その引き換えの値段です。
- Q. すでに変動で借りています。固定に変えるべきですか?
- A. 変えるべきかどうかは、金利の見通しではなく「上がったときに払えるか」で決まります。上がっても払える家計なら、変動のままという判断も成立します。払えないなら、いまの金利がどうであれ、それは負担の重い契約です。将来の金利を当てにいくと、答えは出ません。
- Q. 繰り上げ返済はしたほうがいいですか?
- A. 数字だけでは決まりません。繰り上げ返済で減るのは借金だけではなく、手元の現金と、団体信用生命保険の保障も同時に減ります。減ってもいいものと、減ると困るものを分けるのが先です。手元の現金が生活費の何か月分あるか、そこから確認してみてください。
- Q. 「借りられる額」を教えてもらうこと自体は、悪いことですか?
- A. まったく悪くありません。知っておいたほうがいい数字です。問題は、その数字をそのまま予算にしてしまうことです。上限を知ったうえで、自分でもう一本、線を引き直せば十分です。
金利のニュースは、これからも出てきます。上がる、下がる、次の会合はどうなる。全部、自分では動かせないことです。
動かせるのは、いくら借りるかのほうです。そしてこちらは、契約した日に決まって、あとから戻せません。
——「いくらまで借りられますか」と聞く前に、いくらまでなら返せるか、決まっていますか。
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