変動金利の5年ルールとは——返済額が変わらないのに、借金の減り方は変わる
2026/09/16
最終更新:2026年9月16日(記事内の情報は2026年9月時点)
ある企業で全12回の金融教育プログラムを行っていて、次回は住宅ローンの回です。その資料を作りながら、自分で作った図を見て改めて感じました。金利が上がっても毎月の返済額は同じ。なのに、借金の減り方だけが、はっきり変わっている——数字にすると、これほど違うのかと思いました。
毎月の引き落としは、1円も変わりません。通帳を見ても、家計簿をつけていても、気づけません。変わったのは金額ではなく、中身だからです。
この記事は、変動金利で住宅ローンを返している方に向けて書いています。変動と固定のどちらがよいかは書いていません。いま返している方が、何をどこで確かめればいいかの話です。
結論:変わらないのは返済額だけで、中身は動いています
- 多くの変動金利には、金利が上がっても5年間は毎月の返済額を変えない仕組みがあります(いわゆる5年ルール)。
- 変わらないのは金額だけです。同じ返済額の中で利息の割合が増え、元金の減りが遅くなります。
- 確かめる場所は、毎月の引き落とし額ではありません。年に一度届く残高のお知らせです。
- 5年ルールも、次の返済額を1.25倍までに抑えるルールも、すべての契約にあるわけではありません。ご自身の契約書でご確認ください。
5年ルールとは、何が5年間変わらないのか
変動金利の住宅ローンでは、多くの場合、金利そのものは年に2回見直されます。ところが毎月の返済額は、金利が変わってもすぐには変わりません。5年間は同じ金額のまま据え置かれる、という取り扱いが一般的です。これが5年ルールと呼ばれているものです。
あわせて、5年を過ぎて返済額が見直されるときも、それまでの返済額の1.25倍を超えないようにする取り扱いがあります。こちらは125%ルールと呼ばれます。
どちらも、返済額が急に跳ね上がって家計が壊れることを防ぐための仕組みです。守るための仕様であって、落とし穴として作られたものではありません。
ただ、家計を守るということは、変化を家計に伝えないということでもあります。守られている間、何も起きていないように見えます。
返済額が同じでも、中身はこれだけ変わります
数字で見たほうが早いと思います。3,000万円を35年、元利均等で借りたとして、借りた直後に金利が0.345%から1.195%に上がり、返済額は据え置かれた場合の内訳です。
| 金利 0.345% | 金利 1.195%(返済額は据え置き) | |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 75,838円 | 75,838円 |
| うち利息 | 8,625円 | 29,875円 |
| うち元金 | 67,213円 | 45,963円 |
返済額はまったく同じです。変わったのは、その内訳です。利息にあてられる分が約3.5倍になり、そのぶん元金の減りが遅くなります。
この状態が5年続くと、5年後に残っている借金は約122万円多くなります(同じ前提での単純計算)。毎月きちんと返しているのに、です。
そして6年目、返済額が見直されます。上の前提では、毎月の返済額はおよそ8万9,800円になります。1.25倍の上限にはかからないため、上限に守られることなく、そのまま上がります。
もっと大きく上がった場合には、別の話が出てきます
金利の上がり方が大きいと、毎月の返済額よりも利息のほうが多くなることがあります。この場合、払いきれなかった利息は未払利息として残ります。元金がまったく減らず、返しているのに借金が減らない状態です。
めったに起きることではありませんし、脅すために書いているのでもありません。ただ、「返済額が変わらない」は「何も変わらない」ではない、ということの一番はっきりした例です。
では、どこを見ればいいのか
毎月の引き落とし額を見ても分かりません。家計簿にも出てきません。金額が変わっていないのですから、当然です。
見る場所は2つだけです。
1つ目は、年に一度届く残高のお知らせです。住宅ローン控除の手続きで使う、あの通知です。多くの方が、名前と金額だけ確認して、そのまましまっています。ここに、去年からいくら減ったかが書かれています。
2つ目は、契約書です。5年ルールがあるのか、125%ルールがあるのか。これは契約によって違います。ないタイプの契約もあります。金利が上がったらすぐ返済額が変わる代わりに、未払利息は生じません。どちらが良い悪いではなく、自分がどちらなのかを知っているかどうかです。
年に一度、これだけ確かめてください
- いまの残高はいくらか
- 去年の同じ時期から、いくら減ったか
- いまの適用金利は何%か(借りたときのままか)
- 自分の契約に、5年ルールと125%ルールはあるか
この記事が向いていない方
全期間固定金利で借りている方には、この話は当てはまりません。金利も返済額も変わらないので、確かめる必要があるのは残高だけです。
また、いますぐ借り換えるべきか、変動から固定に変えるべきかを知りたい方にも、この記事では答えをお出しできません。判断に必要な数字が、ご家庭ごとに違うからです。
毎月の返済額は、変化を見せないように設計されています。守るための仕組みなので、それ自体は悪いことではありません。ただ、守られている間も、中身は動いています。
家計の中で「変わっていないから大丈夫」と判断してよいものと、そうでないものがあります。住宅ローンは後者です。金額が同じでも、残高の減り方は変わります。
どちらが得かは申し上げません。年に一度、去年からいくら減ったかを見る。それだけで、判断に必要な材料はそろいます。
よくある質問
- 5年ルールは、すべての住宅ローンにありますか。
- いいえ。金融機関や商品によって異なり、5年ルール・125%ルールのどちらも設けていない契約もあります。その場合は金利が変わると返済額もすぐ変わりますが、未払利息は生じません。ご自身の契約書、または借入先の商品説明書でご確認ください。
- 返済額が変わらないなら、金利が上がっても損はしていないのでは。
- 返済額が同じでも、内訳は変わります。利息にあてられる分が増え、元金の減りが遅くなります。結果として、同じ時点で残っている借金は多くなります。先送りされているだけで、なくなってはいません。
- 未払利息とは何ですか。
- 毎月の返済額よりも、その月に発生する利息のほうが多くなったときに、払いきれず残る利息のことです。この状態では元金がまったく減りません。金利が大きく上がった場合に生じる可能性があります。
- いま何%で借りているか分かりません。どこで確認できますか。
- 年に一度届く残高証明書や返済予定表に記載されています。借入先のインターネットバンキングで確認できる場合もあります。借りたときの金利のままだと思っている方が少なくありませんが、変動金利では見直しが行われています。
- 金利が上がったら、繰り上げ返済をしたほうがよいですか。
- 一律にはお答えできません。繰り上げ返済をすると利息は確実に減りますが、手元の現金も同時に減り、そちらは戻せません。決める前に、手元の現金が生活費の何か月分あるかを確かめることをおすすめしています。
- 変動から固定に変えたほうがよいですか。
- ご家庭の状況によります。残りの返済期間、手元の現金、収入が何本あるか、教育費が重なる時期によって答えが変わります。判断材料がそろわないうちに切り替えると、金利の上下にかかわらず後悔しやすくなります。
自分で作った図を見て手が止まったのは、金額が同じだったからです。数字が動いていれば、誰でも気づきます。気づけないのは、変わっていないように見えるときです。
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