日銀利上げで金利上昇、変動ローンはどうすべきか?売る側にいた元銀行員FPが「動く前に見る数字」を解説
2026/07/22
公開:2026年7月22日(記事内の金利・制度情報は2026年7月時点)
「今は低金利なので、ほとんどの方が変動を選んでいます」
銀行員時代、住宅ローンの窓口で、私が使っていた言葉です。
嘘は言っていません。実際、当時ほとんどの人が変動を選んでいました。でも、私の内心は少し違っていて——「これからは、上がることはあっても、下がることはないだろうな」と思いながら、その言葉を口にしていました。
いま、金利上昇のニュースを見て不安になっている方へ。あの日の私の言葉を信じた人にこそ、伝えたいことがあります。ニュースに動く前に、見てほしい数字の話です。
この記事は、変動金利で住宅ローンを組んでいる、または個人向け国債などが気になっている、30〜40代の子育て世帯向けです。
結論:金利が上がった、はまだ「あなたが動く理由」ではありません。
- 2026年6月に日銀が政策金利を1.00%へ引き上げ、市場は年内の追加利上げ(1.25%への到達)も見込んでいます。個人向け国債も金利が上がりました。
- ただし、変動ローンには通常「5年ルール」「1.25倍ルール」があり、金利が上がってもすぐに毎月の返済額が跳ね上がるわけではありません。
- 動くかどうかを決めるのは、金利のニュースではなく、あなた自身の「返済余力」です。この記事では、その数字の見方をお伝えします。
そもそも、いま金利に何が起きているのか?
まず事実を整理します。日本は長く続いた「金利がほぼゼロ」の時代を抜けつつあります。2026年6月、日本銀行は政策金利を1.00%へ引き上げました。背景にあるのは、賃金と物価がともに上がり続ける流れが定着してきたことです。市場では年内にもう一段の利上げ(政策金利1.25%)を見込む声もあります。
この影響は、すでに身近な数字にも出ています。たとえば個人向け国債(固定5年)は、2026年7月募集分で年1.95%まで上昇しました。「元本が守られて、ほぼ増えない商品」というかつてのイメージが、変わりつつあります。
※金利・発行条件は2026年7月時点の情報です。最新の数値は日本銀行・財務省の公表資料をご確認ください。
なぜ、あの時ほとんどの人が変動を選んだのか?
ここで、冒頭の私の営業トークに戻ります。「ほとんどの方が変動を選んでいます」——この一言は、実はとても強力でした。強力すぎた、と言ってもいい。
人は、判断に迷ったとき「多くの人が選んでいる方」を無意識に安全だと感じます。行動経済学でいう社会的証明です。「みんなが選んでいる」と聞くと、自分で金利上昇のリスクを検討する前に、多数派へ流れてしまう。私はその心理を、意図せず利用していました。
だから、今あなたに必要なのは「みんなはどうしているか」ではありません。「うちの家計は、どこまで金利上昇に耐えられるか」——自分の数字に戻ることです。
金利が上がっても、返済額はすぐには増えない?
不安を煽る情報が多いので、先に冷静な事実を置きます。多くの変動金利型ローンには、借り手を守る2つのルールがあります。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 5年ルール | 金利が変動しても、毎月の返済額は原則5年間は変わらない。 |
| 1.25倍ルール | 5年ごとの見直しでも、返済額の上昇は前回の1.25倍までに抑えられる。 |
ただし、注意すべき点があります。返済額が変わらなくても、金利が上がれば「返済額のうち利息が占める割合」は増えます。つまり同じ額を払っていても、元本の減りが遅くなる。表面上は平穏でも、中身は変わっているのです。ここを見落とすと、5年後の見直しで驚くことになります。
変動ローンを見直したほうがいい人/様子見でいい人
「金利が上がった=借り換え・繰上返済」と一律に動くのは、判断ではなく反射です。あなたがどちらに立っているかで、答えは変わります。
見直しを検討したほうがいい人
- 返済額が今の1.25倍になったら、家計が回らなくなる(返済余力が薄い)
- 借入額が大きく、返済期間もまだ20年以上残っている(金利上昇の影響を長く受ける)
- 金利が上がるたびに不安で眠れない(=そもそもリスク許容度と商品が合っていない)
いったん様子見でいい人
- 返済額が1.25倍になっても、貯蓄や収入で吸収できる余力がある
- 繰上返済に回せる資金を、別に確保できている
- 残りの返済期間が短く、金利上昇の影響を受ける年数が限られている
共通しているのは、判断の基準が「金利が何%か」ではなく、「わが家の返済余力がどれだけあるか」だということです。同じ金利上昇でも、耐えられる家と、そうでない家がある。ニュースは全員に同じ数字を届けますが、答えは家ごとに違います。
金利が上がった今、個人向け国債は「買い」なのか?
固定5年で1.95%という水準を見て、「預金に置くよりいいのでは」と感じる方が増えています。ここでも、判断軸は同じです。その1.95%は、あなたのどのお金の担当か。
数年内に使う予定のあるお金(教育費、住宅の頭金)で、元本を減らしたくないなら、金利のついた元本確保の置き場所として国債は選択肢になります。一方、15年以上使う予定のないお金なら、1.95%が長期の資産形成の目標として十分かは、別の判断になります。「金利が上がったから買う」ではなく、「そのお金に締め切りがあるか」から考えてください。
金利は、あなたが変えられない外部の波です。上がるか下がるかを当てようとしても、プロでも当たりません。
でも、決められることがひとつあります。「返済額が1.25倍になっても、うちは大丈夫か」——この問いに、いま答えられるかどうか。答えられる人は、ニュースが来ても動じません。答えられない人だけが、ニュースのたびに揺れて、一番不安な時に判断してしまいます。
金利を予想するのはやめて、自分の返済余力を確かめてください。それが、あの日の「みんなが選んでいます」から自由になる、唯一の方法です。
よくある質問
- Q. 変動から固定に借り換えるべきですか?
- A. 一律の正解はありません。借り換えには手数料や保証料の再計算などのコストがかかるため、「上がる不安」だけで動くと、かえって損をすることもあります。判断の順番は、まず返済余力の確認、次に借り換えコストとの比較です。金利予想を根拠に決めないのが鉄則です。
- Q. 今のうちに繰上返済をしたほうがいいですか?
- A. 繰上返済は利息の軽減に有効ですが、手元の生活防衛資金や教育費まで削って行うのは危険です。使う予定が決まっているお金を残したうえで、余った資金で行うのが原則です。「金利が上がったから」ではなく「使う予定のないお金があるから」で判断してください。
- Q. これから家を買う場合、変動と固定どちらがいいですか?
- A. これも返済余力次第です。金利が上がっても返済を続けられる余力が厚いなら変動も選択肢になりますし、余力が薄く「上がったら困る」なら、返済額が読める固定に安心の対価を払う考え方もあります。大切なのは、営業の「みんな変動です」ではなく、自分の家計から決めることです。
- Q. 個人向け国債と定期預金、どちらがいいですか?
- A. 2026年7月時点では個人向け国債の金利が定期預金を上回るケースが多いですが、金利水準は毎月変わります。どちらも「元本を守りながら少し増やす」置き場所なので、使う時期(締め切り)が決まっているお金の担当として、その時点の条件を比較して選ぶのが現実的です。
最後に、あの日の窓口の私に、一言だけ返すとしたら。
「みんなが選んでいます、じゃない。あなたの家計が、選べるかどうかだ」
——あなたの返済額が1.25倍になったら、うちは大丈夫。そう言えますか?
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